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独特な雰囲気を持った人達とハグを交わせる、池袋
時は、アメリカ全州での同性婚が合法化される数日前。
僕が掲げている虹色の看板を見て、「僕もレインボーなんです!」と、元気よく近づいて来てくれたおじさまとハグを交わす。
……念のために補足しておこう。僕の看板がカラフルなのは、単純にカラフルな色が好きだからであーる。
1分後。
おじさまと一緒にいた若い男性が「ぼ、ぼくもいいですか?」と戻ってきて、ハグを交わす。「さ、さんにんとも、洋服がピンクですね!」と、小さな声で伝えてくれる。
ん…?僕は、ピンクのジャケット。おじさまも若い男性もピンクのシャツ。でもね、その“ピンク”という単語になにか別の意味を含んでいないかい?と。
5分後。
その男性二人組が、5~6人の男性を引き連れて戻ってくる!!
「おお、そう来たかっ!!」と思ったら、最初のおじさまだけが「もう1度いいですか?」と伝えて、お腹に頬をあてるような低姿勢な位置のハグをしていただける。
……あぁ、今日も街中は刺激に溢れているぜ。
周りで勃発する罰ゲームのジャンケン大会
14駅目は、池袋。僕は2年半ほど西武池袋線沿いに住んでいたので、とても馴染みのある駅。チョイスしたポジションは、東京芸術劇場、立教大学の他に、ピンク街もある池袋駅西口。
時刻は、日曜日の雨上がりの夕方。人通りも多く、25人とハグを交わす。若い世代が街中にたくさんいる。そのおかげか、ハグを交わした半数以上が日本人だった。
10mぐらい離れたところで、男の子1人・女の子2人の3人組がじゃんけんをしている。「ジャンケンで負けた人が罰ゲームでハグをしに行こう」という、やりとりを楽しんでいる。
誰かが負けると、他の人に背中を押される。「いやだ〜。マジで無理!」となり、結局はハグしに来ない。再びジャンケンが始まる。そのループを10分以上はやっている。1人フリーハグあるあるだ。
最終的に「怪しいですよ~!」と言って、近づいて来てくれた、男の子とハグを交わす。
「来るまでが長すぎっ!」と笑ってツッコミながら、3人組としばらく雑談。男の子の表情を見ると、緊張のあまりか頬が痙攣している。
……こんなおじちゃんの奇妙に映る行為に、そこまで勇気を出して来てくれて、本当ありがとうだよ(≧▽≦)
代わる代わる、いろんな人達がハグをしに来てくれる
別の3人組みの大学生の女の子達がハグをしに来てくれる。それを見て、結婚式帰りのスーツ姿の男性2人、続いて、日本人カップルがハグをしに来てくれる。
「なんか元気になるねー!」と、今ここで知り合った人達がみんなで盛り上がっている。
一旦、1人とハグを交わすと、フォーカスが集まることになる。周りにいる人達にも、「なるほど、こういうものなのか」と伝わって、ちょっと興味を持っていた人達もハグをしに来てくれるようになる。
「誰とハグするの?」「僕とですよ!」と返すと、「え?わけが分からない…」と言葉を失って去って行く男性。だけど、池袋の街は止まらない。
「動画を撮ってYoutubeに上げたらいいよ」と伝えてくれる中国人のカップル。「お願いしていいですか?」と満開の笑顔でテンション高く近づいて来てくれる、オレンジ色の派手な衣装のおばさま。「ハグ?する!する!」と盛りあがる、セミナー後の打ち上げ会場に移動するご一行さま。
他にも、短ランを来た男の子が「マジでハグするの?」と言いながら、2mぐらいの距離感を保ったまま、お互い手を広げて威嚇しあう。その後、彼はハグを交わしてくれる。だけど、ハグをした途端に「変なことをしてしまった…」というモードに切り替わり、言葉を発することもなく、目も合わせることもなく、足早に去って行った(笑)
う~ん、池袋って、ディープだわ。他の駅にはいない人達に出会える。
フリーハグという行為が縮めてくれる、人に対する心の距離感
でも、なんだろうね。色んな性別、顔つき、服装、世代、性別、国々の人達とハグをし交わしていると、それぞれの層に対する思い込みがどんどん溶けていくんだよね。
例えば、スーツを着た年上の男性が苦手だとしても、綺麗なおねーさんに緊張しちゃうとしても、外国人と何を話したらいいのか分からないとしても、看板を持っているだけで、ハグをしに来てくれる。ハグを交わす度に、苦手意識もどんどん氷解していってしまう。
仮に、苦手意識がなかったとしても、人という存在に対して、どんどん心の距離が近くなっていく。
見ず知らずのうちに、自分が勝手に心の中で距離を作ってしまっていただけなのかもしれない。変に肩肘を張って付き合おうとするのではなく、その瞬間の自分のままでいいんだなぁと思えてくる。
人に対しても、自分に対しても、信頼感のコップが満たされていくと、普段から街を歩くときの感覚も変わってくる。
だから、特定の層の人に対して、苦手意識があるなんて人にも、是非フリーハグを体感してみて欲しい。世の中には、本当にいろんな人がいることが分かる。見ず知らずの人のたった1回のハグが溶かしてくれるものが、たくさんある。
何度も何度も伝えているけれど、街中で看板を掲げて、見ず知らずの人がハグをしに来てくれるって、本当に心動かされる体験だよ。だって、相手の立場に立ったら、ハグをしなきゃいけない理由なんて全くないわけで、そこを乗り越えて来てくれる。
ハグをしに来てくれる人は、その場にいる他の人にも見られちゃうわけだし、「もし知り合いがいたらどうしよう?」なんて思いにも打ち勝たなければならない。
たまに、2人組で、1人は「ハグしにいきたいっ!」と言って、もう1人は「は?なんで?意味分かんないっ!」という対立から始まり、その後、お互いに譲らないケンカが勃発していることもある(笑)
距離を近づけて来てくれる人っていうのは、そんな心の中のリスクを、すべて乗り越えて飛び込んで来てくれる人。
本当にありがたいことだなぁって、僕は思う。
池袋は、独特な人で溢れていて、反応も様々。怖い物見たさもあるけど、またやってみたいなぁと思える土地だった。